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2017/11/20

カーズ/クロスロード

監督:ブライアン・フィー
声の出演:オーウェン・ウィルソン/クリステラ・アロンゾ/クリス・クーパー/ネイサン・フィリオン/ラリー・ザ・ケイブル・ガイ/アーミー・ハマー/トニー・シャルーブ/ボニー・ハント/ジョン・ラッツェンバーガー/グイド・クアローニ/リチャード・ペティ/トム・マグリオッチ/レイ・マグリオッチ/ハンフィ・フィーラー/ボブ・カトラス/ダレル・ウォルトリップ/ケリー・ワシントン/ボブ・ピーターソン/カイル・ペティ/アンヘル・オケンド/ルイス・ハミルトン/マーゴ・マーティンデイル/リー・デラリア/ポール・ニューマン
吹き替え:土田大/松岡茉優/有本欽隆/大川透/山口智充/藤森慎吾/パンツェッタ・ジローラモ/戸田恵子/立木文彦/デニーロ・デ・ジローラモ/岩崎ひろし/佐々木睦/加藤満/楠見尚己/赤坂泰彦/福澤朗/園崎未恵/内田直哉/あべそういち/丸山壮史/藤高智大/磯辺万沙子/定岡小百合/浦山迅

30点満点中19点=監4/話3/出4/芸4/技4

【あらすじ……未来は自分で決める!】
 天才レーサーとして輝かしい歴史を築いたライトニング・マックィーン。だが車体やトレーニングに最先端の科学を取り入れたジャクソン・ストームら新世代の台頭で成績は下降、焦りから大クラッシュを起こしてしまう。女性トレーナーのクルーズ・ラミレスのもと、再起を懸けて自らも最新のトレーニングを積むマックィーンに対し、新スポンサーのスモーキーは引退を勧告する。自身の未来を決するレースに向けて、カウントダウンが始まる。
(2017年 アメリカ アニメ)

★★★ややネタバレを含みます★★★

【内容について……健全な時の流れを感じる】
 伝説的な活躍を見せたアスリート、その全盛期を過ぎてからの苦闘、最後の瞬間、そしてセカンドキャリアを、僕らはいくつも見てきた。そこへ真っ向から切り込み、過度に美化することなく、けれどノスタルジィや精神論も散らしながら描くのが、本作。『ハスラー』とか『ロッキー』シリーズに連なるものといえるだろうか。

 正直、僕ら凡人にマックィーンのメンタルなどわかりようがない。俺様イズムを貫きつつも先達へのリスペクトを忘れず、ライバルたちとの激闘を心から楽しむなんて“選ばれし者”の特権だ。
 いっぽう、夢を抱きながら、いざという段になって「私は場違いだ」と怖気づくのがクルーズ。こちらのほうが親しみやすい心持ちだけれど、中身は無邪気さとコンプレックスが同居するラテン娘、やはり僕らとは程遠い。

 ただ、自分の時代に終わりが近づいていることを悟る哀しさなら凡人にだって馴染みがある。逆に「誰かに夢を託すのではなく、チャンスさえあれば自分自身が輝きたい」と考えている人だって多いだろう。
 心の中のそうした想いに、この映画はグサっと突き刺さってくる。本作の主ターゲット層であるキッズより、むしろ大人(というか初老)にこそ染みる作品かも知れない。

 この主役ふたりに、鼻持ちならないニューカマーや実利優先のビジネスマンやノー天気な親友や理知的な女性や豪快だけれど気のいいオバサンや枯れた爺さんが絡むストーリーは、なんというか、よく“走る”前作の入り組んだニギヤカさとは違い、エンディングへ向けて真っ直ぐ進む体裁によって、マックイーンとクルーズの疾走感ある生きざまが光り出す。

 そして(レースのルールに多少の無理はあるものの)上手く着地する。
 さびしさとともに未来への期待もあり、マックイーンのカラーリングにはウルっと来るし、またダイナコのテックス社長は「ひとつの文化を応援する富豪の、あるべき姿」を感じさせる。
 赤くてワガママな“元少年”から、黄色くて臆病な“少女”へ、つまり異質な存在の間でバトンが渡される、というのもポイント。速く走りたいという想いさえあれば、他のことなんてどうだっていい。それこそはスポーツ界における、健全な“つながり”。

 そう、今後もこの『カーズ』世界では、ベテラン、若手、競技者、それを支える者たちが一体となって、レースを繰り広げ、物語を連綿と紡いでいくだろう。そんな“健全な時の流れ”を観後感として抱くのだ。
 脚本は『カールじいさんの空飛ぶ家』のボブ・ピーターソン。世代を超えた意志のつながりを描くのが得意な人なのだろう。

 1stの正統な続編(だから最低でも1st『カーズ』は観ておいたほうがいい)としても、3部作の完結編としても、次回作があるならそこへの橋渡しとしても、上々。原題の『Cars3』より日本版タイトルがしっくりとハマる仕上がりである。

【作りについて……松岡茉優を俺にくれ】
 同時上映の短編『LOU』(監督は『カーズ2』などでアニメーターを務めたデイブ・マリンズ)があまりに素晴らしく動くので、もうそこでピクサーに対する安心感が脳内に充填される。

 もちろん本編も見事。凄まじいまでのテクスチュアの再現度といい、クルマの挙動(走行時に段差で少し揺れるのが心地よい)の細やかさといい、感心しきり。いっぽうで前輪やデフォルメされた目のアクションで心情を語らせるという擬人化の上手さもある。
 単に「CGで作ったモデルを動かす」だけにとどまらず、どうすればリアルに、どうすればユーモラスに見えるかまで考え抜かれているのだ。

 また今回は泥の表現に挑戦したとのことだが、実はその部分、いちいち記憶に残っていない。それだけナチュラルだったってこと。とにかく「フツーにクルマが動いて喋る」ことに違和感を抱かせない仕上り。

 美術がまた良くって、特に街並みや、レースコースからスタンドを見上げるアングルがたまらない。明らかに大スクリーン向け。各光景が自分よりも大きなサイズで目の前に広がることによって、この世界へと入り込むことができるのだから。
 スピード感の創出を担っているのが音響。担当は『モンスターズ・ユニバーシティ』のほか『スカイ・クロラ』などで日本でもお馴染みのトム・マイヤーズだ。

 ジャクソン・ストームはすぐに藤森慎吾だとわかったのに対し、クルーズは「たぶん純声優ではなく若手の女優さんだと思うんだけれど、それにしては上手いよなぁ」「声(の芝居)だけで惚れるわ」と思いながら観ていた。そしたら松岡茉優。本作いちばんの驚き。俺にくれ。

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