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2018/06/04

ピープルvsジョージ・ルーカス

監督:アレクサンドレ・O・フィリップ
出演:ゲイリー・カーツ/ニール・ゲイマン/アンソニー・ウェイ/エド・クラマー/デヴィッド・プラウズ/ジョー・ナスバウム/岡崎能士/デイヴィッド・ブリン/サイモン・ペグ/フランシス・フォード・コッポラ

30点満点中16点=監3/話3/出4/芸3/技3

【愛される作品と、憎まれる創造主】
 1977年公開の第1作以来、長年に渡り世界中で愛され続けている『スター・ウォーズ』シリーズ。コスプレで劇場へ駆けつける人たち、数々の模倣やパロディ、薫陶を受けたクリエーター、爆発的に売れる関連商品……。だがファンたちは、シリーズの生みの親=ジョージ・ルーカスに対して秘かに不満を募らせていた。熱狂的ファンのコメントから『スター・ウォーズ』文化を読み解く。
(2010年 アメリカ/イギリス)

【お父さんはどこへ行く】
 ひたすらインタビュー(かなり膨大な数のファンや関係者に訊いていて、カットされた人も多い模様。クレジットを見ると森本晃司にも話を聞いているんじゃないだろうか)とアーカイブ映像だけで突き進む。
 その点ではドキュメンタリー映画として工夫のない仕上がりなのだが、当然ながらディレクションというか「こっちへ持って行きたい」「いいたいのはこういうこと」という意志は感じる。
 要するに親子なんだな、ルーカスとファンって。

 親が与えてくれたものに目を輝かせて「楽しい楽しい」といいながら、ちょっと気に入らないことがあると口をすぼめてスネる子どもたち。たとえば「モノクロ作品のカラー化には反対したくせに、自分のモノには躊躇なく手を加えるのかよ」とか。
 でもさ、そういう理不尽さってお父さんの特権なのだな。

 あと「新3部作は、なんかツマンなくなってるしっ」ってのは的外れ。言いかたを変えれば、ツマンナイと感じて当然。作るほうだって観るほうだって年を取っているわけだし、テクノロジーや社会システムや国際情勢も大きく変化した。作品の仕上がりに占めるルーカスの影響力がどんだけ大きいとしても、制作に関わるスタッフやキャストは世代交代している。
 そのとき作られたものには、そのときの空気が色濃く反映する。だから、旧3部作と新3部作は“別物”になって当たり前なのだ。
 子どもの頃、お父さんに連れて行ってもらった旅行で感じたドキドキワクワクと同じものを、いま感じようと思っても無理でしょ。

 だいたい、作中でも述べられている通り「老人ホームに入っても、ああじゃないこうじゃないって話してる」ような作品に出会えたことじたいが素晴らしいことであるはず(日本でいえばガンダムか?)。
 大きいからこそ、優れているからこそ「作品はどこに属するか」なんて議論も起こる。
 野球やサッカーや競馬といった観戦スポーツと同様の影響力と発信力を持ち、映画というカテゴリーの中にあるはずなのにそこからハミ出すほどの密度を秘め、ひとつの現象として世界を覆う。そういうものと同時代を過ごせる幸福。

 作中で『スター・ウォーズ』は、一般参加型の文化、ルーカスは遊び場を作った、ドラッグのようなもの、殴られても彼のもとへ帰るDV……などと評されているわけだが、なるほど、どれも正しい。
 で、その文化や遊び場が気に入らなければ、暴力が嫌なら、離れればいいだけのこと、という意見も、もっともなものだ。

 つまり文句をいった時点で、というか簡単に抜け出せない場所へ足を踏み入れた時点で子どもの負け、お父さんの勝ち。で、お父さんは寛大だから、ことさら「勝ったぞ」とはいわないし、子どもらも「じゃあお父さんが嫌いか?」っていうと、必ずしもそうではないらしい。
 意外と、そういう関係を微笑ましく見せる映画なのかも知れない。
 ただ本作の公開後、ディズニーがルーカスフィルムを買収、『スター・ウォーズ』関連の権利がルーカスから離れるなど、状況は激変。さすがにお父さんも疲れちゃったのかな。

 ちなみに個人的には、新旧ともちゃんと『スター・ウォーズ』だと感じている。「安全で間の抜けたものになるのは許せない」というファンの気持ちは理解できるけれど、ちゃんと9分の3+9分の3=9分の6になっていると思う。修正だってOK、キャラクター設定の変更もウェルカム。トータルとしての映画の完成度を上げるためだったら、どんどんやりたいことをやればいいのだ。
※ちなみにこれを観たのは最新3部作の公開前

 過去に『スター・ウォーズ』シリーズについて書いた感想を読み返してみると「この映画が存在したというだけで十分と思わせる、そういうパワーが満載」だの「一級のエンターテインメント」だの、果ては「人類の財産」だとか、絶賛じゃん、俺。
 そんなふうに楽しんだもんが、真の勝者じゃないだろうか。

 でも自分の感想、ミディ=クロリアンとジャー・ジャー・ピンクスには触れていないんだよね。案外、自分自身も口をすぼめながら“見て見ぬふり”をしちゃっていたのかも。

エピソードI ファントム・メナス
エピソードII クローンの攻撃
エピソードIII シスの復讐
エピソードIV 新たなる希望
エピソードV 帝国の逆襲
エピソードVI ジェダイの帰還

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