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2018/08/29

モリス・レスモアとふしぎな空とぶ本

監督:ウィリアム・ジョイス/ブランドン・オールデンバーグ
30点満点中18点=監3/話4/出3/芸4/技4
【彼がたどり着いたのは、不思議な本の家】
 突然の嵐に、街は何もかもが吹き飛ばされてしまう。ベランダで読書をしていた“彼”も、本もろとも風によってどこかへ運ばれる。家々がひっくり返り荒れ地と化した、そこ。彼の本からも文字が飛ばされて白紙、読むことはできない。そんなときに出会ったのが、空を飛ぶ不思議な本。その本に誘われるまま進んだ先には、一軒の屋敷が建っていた。小さなものから古いものまで本で一杯の屋敷で暮らし始めた彼は……。
(2011年 アメリカ アニメ)

★ややネタバレを含みます★

【どんな風に人が夢をつないできたか】
 セリフは一切なし。主人公はキートンやチャップリンなど無声映画時代を思わせるいでたちと趣で、彼や本の動きと音ですべてを表現する。

 本たちの多彩なキャラクターや感情を楽器の種類の違いと旋律で描写する手法が面白く、また完璧に“風”というものを描き切った序盤は実に鮮やかだ。
 ただ、文字まで飛んじゃう、『オズの魔法使い』的な嵐、本が命を持っている設定など、「いろいろ詰め込んだファンタジー」の域を出ないのが中盤までの印象。
 ところが老いぼれブックの手術の場面から、一気に本性を現す。
 語られるのは「本は読まれることで生きる」という真理。瓦礫の街、パート・モノトーンの人々が彩られていく展開に震える
 そう、これは人の歴史そのもの。「どんな風に人が夢をつないできたか」を描いた映画なのだ。
 IMDbによれば、確かにバスター・キートンやオズのほか、ハリケーン・カトリーナや“本への愛”からインスパイアされた作品とのこと。そこに込められた想いはまた、9・11や3・11以後の世界に対して、夢と物語と娯楽と芸術が果たす(べき)役割、そして願いでもあるだろう。
 短い中に、軽快に“生きる道”を盛り込んでしまった秀作だ。
●主なスタッフ
 監督・脚本を務めたウィリアム・ジョイスは『ルイスと未来泥棒』『ロボッツ』の製作総指揮。共同監督のブランドン・オールデンバーグは『ロボッツ』のconceptual designer。音楽は『American Idol』などのジョン・ハンター。

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