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2018/09/26

太陽の王子 ホルスの大冒険

監督:高畑勲
声の出演:大方斐紗子/平幹二朗/市原悦子/横内正/堀絢子/水垣洋子/津坂匡章/赤沢亜紗子/杉山徳子/小原乃梨子/浅井ゆかり/三島雅夫/永田靖/横森久/東野英治郎

30点満点中18点=監4/話3/出3/芸4/技4

【村の仲間たちとともに】
 北の悪魔グルンワルドに苦しめられる世界。少年ホルスは銀色の狼に襲われるが、岩男モーグにより窮地を脱する。「仲間とともに戦え」という父の遺言とモーグから譲り受けた太陽の剣を携えて旅に出るホルス。が、傷ついた彼を救った村にも魔の手が伸びる。グルンワルドに滅ぼされた村の生き残りというヒルダと出会ったホルスや村人たちは、そこに潜む企みを知る由もなく、やがてホルスは孤立していくのだった。
(1968年 日本 アニメ)

※本作を鑑賞し、この感想を記したのは2013年8月。まだ高畑監督がご存命の時期でした。ご冥福をお祈りします。

【ちゃんと作られた子供向けアニメ映画】
 アイヌの伝承をもとに作られた人形劇を、舞台設定の変更などアレンジを加えて映画化したものらしい。
 高畑勲の初監督作で、スタッフには宮崎駿に大塚康生、小田部羊一らビッグネーム(当時は若手だったけれど)がズラリと並んでいる。ホルス役の大方斐紗子なんか『あまちゃん』では鈴木のばっば、『ひよっこ』では澄子のばあちゃんですよ。

 大昔、夏休みや冬休みが来るたびにTVで放送されていて、同じくそのローテーションに組み込まれていた他の劇場用アニメと比較して「ちょっと別格」という印象を子供心にも抱いていた。
 成人してから見直してもその感想は変わらず。そしていま、映画好きのオッサンになったうえで観ると「ちゃんと作られた子供向けアニメ映画」であることを再確認できる。

 近景の動きから遠景の格闘までをワンカットで描き切るオープニングから始まって、常にキャラクターは舞台を立体的に駆けまわる。重なったセルをズラして動かし奥行きを生み出す技法も見せる。
 太陽バックのカットや揺れる松明など明かりを重視した絵。波、風、炎、吹雪といった自然もナチュラルに表現。湿り気や陽気を創出する背景美術も美しい。
 民族衣装、飛来する顔型の氷、リュートや高らかな管楽器や合唱がフィーチャーされた音楽など、デザインワークとサントラワークは、東欧っぽさと時代劇風味とアバンギャルドの融合体として独特の世界を支える。
 とにかくセンスとテクニックの塊だ。

 物語は、自立と協調と理不尽への抵抗というキッパリ感をベースにし、平易ながら格調高さも感じさせるセリフが配され、その向こうには暗さと切なさと悲劇性がチラリと顔をのぞかせる。子供に「面白いんだけれど、ひょっとしてイケナイものを観てしまったんじゃ」というザワザワを覚えさせるパワー。後のRPGやアドベンチャーゲームのストーリー展開に影響を与えたであろう雰囲気も漂わせる。

 惜しむらくは、グルンワルドとヒルダの出自や太陽の剣についてなど、設定のディテールがバッサリ割愛されていて深みが不足している点。
 また中盤の止め絵は、見方によっては流れにメリハリを生むポイントになってはいるものの、やはり安っぽく感じられてしまって残念。
 wikipediaを見ると「動画となるカットの静止画(止め絵)への変更や時間の短縮などを余儀なくされた」とあるから、作り手としても不本意な部分だったはずだ。

 そのあたりを除けば、パーツ1つ1つが「ちゃんと作られた子供向けアニメ映画」へ向かって力強く収束していることがよくわかる。

 コナン(保護者を亡くした少年が船で旅をして村人や少女と出会って悪者と戦う)、カリオストロの城(崖から落ちそうになるも投げ道具のおかげで助かる)、ラピュタ(飛行石)、ナウシカやもののけ姫(人智を超えた力への抵抗や巨体への畏怖、異なる価値観の対立)など、その後の宮崎アニメへ直結する展開/設定を数多く見られるのもポイントだろう。

 権利関係で難しいのかも知れないけれど、ジブリ期の作品だけでなく、この映画もTV放送のローテーションに入れてくれればなぁとも思う次第。

●主なスタッフ
脚本/深沢一夫『母をたずねて三千里』
作監/大塚康生『未来少年コナン』
原画/宮崎駿『借りぐらしのアリエッティ』
原画/小田部羊一『アルプスの少女ハイジ』
編集/千蔵豊『海のトリトン』
美術/浦田又治『バビル2世』
音楽/間宮芳生『セロ彈きのゴーシュ』

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