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2018/09/13

未来のミライ

監督:細田守
声の出演:上白石萌歌/黒木華/星野源/麻生久美子/吉原光夫/宮崎美子/雑賀サクラ/畠中祐/神田松之丞/役所広司/福山雅治
30点満点中18点=監4/話3/出4/芸4/技3

【あらすじ……くんちゃんとミライちゃん】
 建築家のおとうさん、元編集者のおかあさんと横浜で暮らす4歳の男の子、くんちゃん。生まれたばかりの妹=ミライちゃんを「守る!」と誓うのだが、おとうさんもおかあさんもミライちゃんにかかりっきりで面白くない。おもちゃは出しっぱなしで駄々をこね、おにいちゃんらしさなど皆無だ。そんなある日、中学生になったミライちゃんが家の中庭に現れて……。
(2018年 日本 アニメ)

【内容について……何者かになる瞬間】
 予備知識なしで観たら、ド地元が舞台になっていたので驚いた。くんちゃんが高校生になるころ、あの辺りは何ぁんにも無くなっちゃうのか。

 ミライちゃんが語る通り“わたしの今”はそれ単独で存在するわけではなく、“誰かのいつか”の結果として、連続するさまざまな瞬間の果てとして、ここにある。
 そうしたテーマじたいは真新しいものではないものの、見せかたとして「いくつもの瞬間が同時に(あの中庭には)存在する」という手法を採ったのはフレッシュだ。

 その“世界の連続性”の中心に、くんちゃんという幼児を置いたのも面白い。
 うちではよく幼い子を「まだ人間じゃない」「セキセイインコのほうがハッキリとした自我を持っている」なんて表現するのだけれど、たぶん幼児自身も、自分が何者なのか意味不明の中で生きているのだろう。
 だいたい本作、くんちゃんとミライちゃん(と、さして意味のない形で言及されたおかあさんがたの叔父さん?)くらいしか人名が出てこないし。

 が、世界と自分との関係、時間の流れ、人の想いのつながりといったものを、おぼろげながら感じ取れるようになり、ああこれは生きるうえで理解しなければならないものなのだと無意識に悟ったとき、その子は何者かになる。
 その気づきへのキッカケは、かっこいいとか怖いとか面白いとか、もっと優等生的な責任感とか、いくらでもある。というか、ひとつではないだろう。多くの「?」や「!」がミックスされて、何者かに“なろうとする”瞬間を迎えるのだ。
 そんな様子を描いた、意外と哲学的な作品。

 あと『おおかみこどもの雨と雪』と通底するものも感じた。子どもなんて思い通りに育っちゃくれないのだ。

【作りについて……福山雅治のカッコよさ】
 正直、くんちゃん、おとうさん、おかあさんはミスキャストだと感じる。喋るたびに中の人の顔がチラつくのだ。

 が、この3人以外が秀逸。謎の男(ゆっこ)=吉原光夫のヒネクレ感とか、未来のミライちゃん=黒木華の健やかさとか、ばあば=宮崎美子のナチュラルさとか、遺失物係=神田松之丞の超越感とか。
 極みは福山雅治(エンドロールまで気づかなかった)。いやまあカッコいいこと。声で“死に損ねた男のヤツレと諦観と色気”を表現しちゃうんだもの。

 いかにも「建築家が好きに作りました」感あふれる家も魅力的。生活空間として作り上げられていく過程にある、という雰囲気がよく出ている。柔らかさまで感じられる衣装や透明感のある音楽は本作の世界観をしっかりと支えるし、遺失物係の明治・大正ゴシック風デザイン(tupera tupera)はゾワゾワとお尻を刺激する。

 顔を真っ赤にして暴れる、膝立ちのまま移動する、描きこまれる小道具とボカされる背景など、デフォルメと細やかさと密度と省略のバランスが、楽しい動きと場面を作る。

 くんちゃんが初めてミライちゃんと出会うシーンでの、ミライちゃんの肌の色合いと質感が秀逸。この“絶対的に柔らかで温かで儚くて生命感にあふれていて、守らなければならない存在”という表現の成功が、そのまま本作の肌触りに直結しているように思う。

●主なスタッフ
音響/柴崎憲治『愚行録』
画面設計/山下高明
録音/小原吉男
音楽/高木正勝
編集/西山茂
衣装/伊賀大介
色彩設計/三笠修
美術/高松洋平
美術/大森崇 以上『バケモノの子』
美術/上條安里
作監/青山浩行
CG/堀部亮 以上『サマーウォーズ』
作監/秦綾子『鋼の錬金術師 嘆きの丘の聖なる星』

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