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2018/11/14

リロ&スティッチ

監督:クリス・サンダース/ディーン・デュボア
声の出演:デイヴィー・チェイス/クリス・サンダース/ティア・カレル/デヴィッド・オグデン・スタイアーズ/ケヴィン・マクドナルド/ヴィング・レイムス/ゾー・コードウェル/ジェイソン・スコット・リー/ケヴィン・マイケル・リチャードソン/スーザン・ヘガティ/エミー・ヒル
30点満点中19点=監4/話4/出4/芸4/技3

【宇宙から来た最恐兵器は、イヌ?】
 ハワイ・カウアイ島に暮らす少女リロは乱暴者で夢想がち。親代わりを務める姉ナニとは、たがいに大切な家族と自覚しながらも衝突が絶えず、児童保護局によってふたりは引き離されようとしていた。リロが引き取りスティッチと名づけた捨て犬は、実はエイリアン・モンスター。ジャンバ博士によって生み出された、破壊衝動だけを持つ試作品626号だ。回収すべくやって来たジャンバ博士らに、リロとスティッチは執拗に狙われて……。
(2002年 アメリカ アニメ)

【善悪のカオスこそが真理】
 監督/脚本は、えらく感動させてくれた『ヒックとドラゴン』のコンビ。でなければ「どうせ小2女子向けでしょ」とタカをくくって観なかったはずだが、いやいやどうして、強烈な映画だ。

 なにしろ『フランケンシュタインの怪物』~TV版『キャシャーン』のひな型に『E.T.』と『ホーム・アローン』をmixさせるというトンデモな内容。登場人物の誰ひとり善ではない(しいてあげればデイヴィッドだけは善良か)し、悪でもない(ジャンバですら優しさを見せる)。みんなそれぞれ自分のやるべきことをやっているだけ。

 にしても、やりたい放題。スティッチは暴れまくり、ペットだというのに顔に水をかけられ踏んづけられる。リロは友人に噛みつき、姉には反抗。ナニは妹を虐げ、クルマを蹴り飛ばす。エイリアンどもにとって、人間なんて知ったこっちゃない、蚊のほうが貴重という、人類の価値観を崩壊させる星新一的設定(ついでにいえば“片目で3D”って、ひょっとして昨今の立体映画こそ絶対という風潮をdisってる?)。

 人はさびしいから乱暴になる。その分析にはハっと心を打たれるし、姉妹ふたりの生活なんだからある程度の社会からの逸脱はやむを得ないとも感じるけれど、と同時に暴力の正当化に対する危惧も抱かせる。
 でもまぁ、そういうものなんだよね、生きるって。美談ばかりじゃない。汚れることもある。我を失いヤケになることだって。善悪に境目なんてない。価値観は相対的なもの。ベースにあるのは、いつもエゴ。
 ディズニー作品とは思えない、これ親子で観て大丈夫かとヒヤヒヤするくらいに、リアル社会の真理を突きまくる

 そこにひっそりと加えられるのが、優しい視線。
 捨てた人形を拾いに戻ってくるリロの姿に、彼女の孤独や、思い通りに生きられないやるせなさが浮かび上がる。枕に顔を当てて叫ぶ姉妹の様子は、ツライ気持ちを抱えながら、たがいにいたわりあいながら、どうやってふたりが暮らしてきたかを物語る。スティッチは、さりげなくリロやナニに頼るようになる(サーフィンの場面でナニの足にしがみつくところが好き)。

 エゴも寂しさも暴力も依存も等身大に描くことで、本作を観る者や、その周囲にいる誰もが、リロでありナニであり626号であるかも知れない可能性に思い至り、感情移入を誘うのだ。
 加えて、そんな主要キャラクターの側に真っ正直なデイヴィッドを配置して“男の役割”も自覚させる。
 う~ん。書いていて、つくづくスゴイ内容だなと感心してしまう。

 作りはといえば、やや古さのある画面レイアウト、TVカートゥーン的なスケール感ではあるものの、映画的な楽しさも随所に観られる。
 新しい仕事が見つかったと飛び出していくナニ~追われるスティッチを1カットでまとめるなどリズムは上質。スターシップのバトルシーンなどスピード感やニギヤカさもいい。生物的フォルムのマシン群、太ももがヤケに肉感的なナニなどデザインの仕事もキュートだ。

 だが、やはりそれ以上に「小2女子向けの顔をしながら、善悪のカオスこそが人の世の真理と語る社会派」という極悪な(褒めている)仕上がりに衝撃を覚える佳作である。

●主なスタッフ
編集/ダーレン・T・ホームズ『レミーのおいしいレストラン』
美術/ポール・A・フェリックス『ボルト』
キャラデザ/バック・ルイス『マダガスカル』
キャラデザ/バイロン・ハワード『塔の上のラプンツェル』
音楽/アラン・シルヴェストリ『キャプテン・アメリカ』
音響/クリストファー・ボイエス『タンタンの冒険』

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